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コラム

水質汚濁防止法

2019年05月14日
水質汚濁防止法

日本の国土は多くの山、森林を抱え、豊かな水資源に恵まれた環境を誇っています。しかし、戦後の高度経済成長期に公害という負の遺産を抱え、国土の水環境を一時的に大きく損なった時期を忘れてはなりません。「水質汚濁防止法」はその反省から、企業や工場に対して排出する汚染水や水資源の汚染など、厳しく規制している法律です。この「水質汚濁防止法」をクリアするためにIoTにも大きな期待がよせられています。

水質汚濁防止法とは

「水質汚濁防止法」とは工場や事業所からの排水を規制する法律です。公共用水域の汚濁を防止する目的で昭和45年に制定され、その前身はさらに昭和33年に制定された「公共用水域の水質の保全に関する法律」と「工場排水等の規制に関する法律」になります。「水質汚濁防止法」は略して「水濁法」とも呼ばれています。その成立の背景には、廃液や汚染水によって漁場などが汚染された「浦安事件」などの当時の公害問題がありました。昭和30年代から昭和40年代にかけて水質に関する法整備が整い、現在の「水濁法」へ成立していったのです。

水質汚濁防止法では、「特定事業場」からの公共用水域への排出、または地下水への浸透を規制しています。「特定事業場」は、各都道府県への届出制度になっており、水質汚濁防止法施行令で定められた「特定施設」を設けている事業所になります。そのため、その事業所数は年月によって増減しています。さらに「水濁法」は、各都道府県知事の強い権限で計画変更命令や改善命令を出すことができ、排水基準について、より厳格な条例を制定できます。

違反した場合

「水質汚濁防止法」に違反すると厳しい罰則が規定されています。もっとも重い罰則規定では「1年以下の懲役又は100 万円以下の罰金」が定められています。これは知事からの計画変更命令、あるいは改善命令等に違反した場合とされていますが、前述した通り都道府県によって条例での規制も対象となっています。また、都道府県ごとに設置された条例による罰則規定もあり、その地域ごとに水濁法と条例によって運用が異なっている点も特筆すべきところです。工場を多く有する都道府県では、このために柔軟で実態に沿った行政を展開していくことができます。なお、罰則規定は行為者のみならず、企業や法人、その組織に対しても罰金が科せられる場合もあります。

企業の対策

戦後の昭和の公害時代の反省から、その後水質汚染への対策が国策としても優先されてきました。そのため多くの企業・工場がその対応・対策を講じてきましたが、さまざまな理由からスムーズに進んでいるケースばかりではありません。現在でも、水濁法による改善命令や処罰の対象になる法人・工場は後を絶ちません。悪質な例を除くと、チェック機能が利かなかった、教育が不十分であった、人員数が足りなかった、などのケアレスミスから構造的な問題までさまざまなケースがみうけられます。

これらに対して、IoTを活用した新しいムーブメントが注目を浴びています。例えばクボタではもともと水環境に優れたノウハウを持っていましたが、近年ではIoTを活用し、水環境を総合的に網羅するソリューションを提供しています。工場や施設における水の監視、診断、メンテナンスを総合的にサポートする、KSIS(Kubota Smart Infrastructure System)の始動は、水環境の関係者の注目を集めています。

日立ではグループを挙げて水環境に関する広範な製品・システム・サービスに取り組んでいます。その用途は水源保全、治水・利水から、上下水道、排水処理、水の再生にまで及んでおり、社会のインフラとして重要な問題解決の方法を提示しています。滋賀県に本社を置くオプテックス株式会社では、本業のセンサー事業を活用し、水質遠隔管理をシステムとして提供しています。これもIoTを活用した水環境ソリューションといえます。

オプテックスではその優れた水質遠隔管理ソリューションを海外にまで展開しており、JICA(国際協力機構)の要請によってベトナムで流域水環境管理能力向上のための検証を2016年から開始しています。急速に発展するベトナムでは、日本と同様に人的リソースが間に合わないため、IoTの活用に大きな効果を期待されています。

まとめ

水質汚濁防止法は環境を守るために厳しく運用されていますが、企業や工場にとっては高いハードルともいえます。人材不足は今後も日本に重くのしかかる課題ですが、水質汚濁防止法をクリアするには人材育成が必要になるためです。
AIやIoTを活用することで人材不足、キャリア不足へ対応する方法こそ、将来に向けて期待できる方策ではないでしょうか。

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