jumper

コラム

IoTがもたらす新たな水質管理

2019年11月21日
IoTがもたらす新たな水質管理

平成28年度に一級河川で起きた水質事故は1,000件弱といわれています。かつて利根川の浄水場で起きたホルムアルデヒド検出事故は、千葉県の約35万世帯を断水させ、千葉・埼玉・東京・茨城・群馬の広範囲に影響が広がりました。汚染の原因は水質分析および排水処理に問題があったといわれています。

排水処理は重要な工程のひとつであり、社会的な責任を持っています。この水質分析・排水処理とIoTの関係性をみていきましょう。

水質分析・管理のIoT化

工業製品の生産には大量の水が必要です。一般的に家庭で1日に1人が使う水の量は300リットルですが、工業用水は1日に約3,370万リットル(東京ドーム約27杯分)にもなります。そのほとんどが工場や施設外に排水されていきますが、排出の際には法律で決まった排水基準を満たしていなければなりません。

排水基準を満たすためには、まず水質分析が必要になります。水質分析では水温、水素イオン濃度、溶存酸素量、濁度、電気伝導率、大腸菌群数などが計測されます。それぞれの許容値を確認し、異常があれば対処しなければなりません。

こうして水質を分析・管理することで排水処理は実施されていきます。本来であれば、この工程には多くの機器と人手がかかっていました。また、水質分析装置は高額であるため、施設内に監視ポイントを気軽に設置することはできなかったのです。

この現状と課題に対して水質分析・管理のIoT化が、今ひとつの答えを出しています。

IoTでリアルタイムに検知

IoTの活用でどのように水質分析・排水処理が変わったのでしょうか。まずセンサーを活用したネットワークにより、計測システムの形が変わりました。ローコストの各種センサーを多数のポイントに設置し、ネットワークを介してサーバーに情報を集約することで、リアルタイムで水質状況を把握することが出来るようになりました。

さらに遠隔モニタリングを拡張することで、工場内の人間だけでなく、工場外の管理部門や関連会社も情報を共有する事が出来るのです。これは迅速な対処に大きな効果を発揮し、大きな事故に発展する前、つまり兆候状態から対策を講じることも出来ます。

このようなシステムの利点として「見える化」があります。単に数値の羅列だけでなく、リアルタイムで変動するグラフや計測データ表示は、人間にとっても親和性のあるユーザーインターフェースです。専門家やベテラン技術者でなくとも判断しやすいシステムとなっています。

まとめ

排水とIoTの関係は今後も深まっていくと推測されます。日本の水質技術は世界のトップレベルにあると言われていますが、一方でIoTの発展は日本の優位性を脅かすかもしれません。IoT技術は多くのレベルの高い技術者や経験を必要としないからです。 それだけに、国内の工場や施設にIoTを導入し、IoTを使いこなし、IoT時代にあった高い水質管理技術の発展と維持を目指すことが重要ではないでしょうか。

IoTの導入と発展は、日本の成長になくてはならない方策のひとつです。業界関係者だけでなく、ぜひ多くの人に知ってもらいたいテクノロジーであると感じます。

CONTACT

製品・サービスに関するご質問、お見積もり、お問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。

 050-5505-5509

受付時間 9:30 - 12:00, 13:00 - 17:00
(土日祝および年末年始を除く)