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コラム

人材不足に対応するためのIoT|ロードマップ例

2020年01月24日
人材不足に対応するためのIoT

戦後の昭和時代には若い人材が全国より都市部に集まり、高度経済成長期を支えました。彼ら彼女らは中学校卒業と同時に集団就職で地方から上京し、都市部のあらゆる職層に配されていきました。いわゆる「金の卵」と言われ、今に続く日本の繁栄の基礎を担ってきたのです。

製造業では当時の「金の卵」たちが、現在に至るまで重要な人材層を形成していますが、最近の人材不足を補う「金の卵」たちは、すでに国内からは枯渇しつつあると言えます。

昨今では、高齢化や少子化などを原因としたわが国の人材不足に対し、その解決方法のひとつとして「金の卵」に代わってIoTが大きく注目されています。IoTを使った技術継承のロードマップをみていきましょう。

目的は技能の共有と平準化

世界最大の会計事務所「デロイト トウシュ トーマツ」のレポート「世界製造業競争力指数」によると、日本は中国・米国・ドイツに次いで4位になっています。また、電通の調査によると「ハイテク」「勤勉」「上質」が日本のイメージを表すキーワードになっています。

しかし、日本のイメージであるハイテクや工業力の源泉となっている製造業の現場では、深刻な人材難という問題に直面しています。恒常的な人材不足から、日本のお家芸とも言える職人技が伝承されず、やがて技術力が低下していくのではないかと心配されているのです。

今までの技術継承は主に現場での「暗黙知」によって行われてきました。熟練の技能者と共通の時間と場所、経験を共有することでその技術を伝承していったのです。しかし「暗黙知」による技術伝承は時間がかかるため、人材不足の現在では有効に機能しなくなりつつあります。


そこで注目されているのがIoTを活用した技術の継承です。その目的は、技能の共有と平準化にあります。

データの利用イメージ

技能の継承にスポットを当てたIoTによるデータ活用はどのようなプロセスを経るのでしょうか。主に3つのプロセスが挙げられます。

データの収集・蓄積

IoTのセンシング機能によって、ベテラン技能者の能力や技能を収集します。センシングとは、各種センサーを使って光・温度などの外的要因や、物体の形状・硬軟・色彩、物体の動的状態である加速度・衝撃度などの各種の情報をキャッチすることです。このようなセンサーをセンシングデバイスとも言います。

センシングデバイスを通じて、技能者のとった行動やその結果を収集します。つまり、時々の状況に合わせて技能者が行った「段取り」「調整力」「判断力」「対応力」などの経緯と結果がデータベースに蓄積されるのです。

データによる分析・予測

収集されたデータは、同時に他の作業者と比較検討されます。優れた結果を残した作業者とそうではない作業者の違いを比較することで、熟練技能の全体像を照らし出します。こうしてベテラン技能者の優れた技能を、誰にでも明確に分かるように「技能」「ノウハウ」「知見」を体系化できるようになるのです。

データによる制御・最適化

次に体系化されたベテラン技能者の技能を共有していきます。共有された体系化データは暗黙知と違い、誰でもアクセスやデータ活用が可能になります。その範囲は工場内だけでなく、ネットワークに繋がった工場外のオフィスや、国内の別な地域の工場であってもアクセスできるのです。

さらに言うと国内だけでなく、海外の工場や人材も活用が可能です。これらを経て人材の高度な技能習得、能力向上が期待できます。突き進めると、人間だけでなく機械にも活用されます。スマートロボットという発想があり、人間に代わって機械が熟練技能者の能力を発揮することも可能なのです。

まとめ

人材難に対して有効な対応策となるIoTは、国内外から注目されています。ドイツではインダストリー4.0というコンセプトでIoT活用を実施しています。米国や中国でもIoT化には積極的な企業が多いという調査結果があります。

一方、総務省による国際調査研究(平成28年)では、日本や英国は米国・ドイツ・中国と比べて、IoTに対するスタンスが低いという結果が出ています。しかしIoT活用は人材不足に悩む日本にとって有効な対策であることは間違いありません。積極的に活用することが将来への一歩ではないでしょうか。

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