jumper

コラム

IoT導入により経験値をデータ化

2020年03月27日
IoT導入により経験値をデータ化

「ものづくり日本」と言われますが、たしかに日本の経済は製造業が占める割合が多いと言えます。製造業が現在の日本のGDPに占める比率は約20%であり、サービス業に次ぐ大きさです。

しかし、いま製造業の現場では従来のやり方では通用しない問題が続出しています。製造の現場からも、危機感が大きくなっているようです。

その解決の糸口としてIoT導入が官民を問わず有望視されています。ここでは、課題解決に効果があったIoT導入の事例をご紹介します。

【課題】ノウハウの継承が困難な属人作業

2018年に発表された「平成29年度 ものづくり基盤技術の振興施策」では、4つの危機感が提示されています。「ものづくり基盤技術の振興施策」は経済産業省、厚生労働省、文部科学省が合同で作成しているレポートで、その内容から政府の危機感が現れていると考えられます。

4つの危機感の内容は「人材の量的質的な問題」「従来の強みが足かせになっている」「変革期を経営者が理解していない」「非連続的な変革の必要性を理解していない」となっています。

その中でもここで取り上げるのは人材面での危機ですが、人手不足と熟練者や経験者の教育が喫緊の課題となっています。これまで、日本の工場などにおける職人技は暗黙知を介して伝承されてきました。つまり、「見て覚えろ」「身体で覚えろ」という教育方法です。しかし、これに対する拒否感は世代が若くなるほど大きくなっており、もはやこの方式が通用しなくなっているのです。

高度なノウハウと経験を必要とする作業は、どうしても属人化してしまい、一部のベテランにしか「分からない」「作業できない」という閉鎖的な状況を生んでしまいます。ベテランの育成に成功したため、日本の「現場力」がより強くなり、強い製造業を育ててきたという面も否定できませんが、現在はこの方式がかえって国内の製造業成長の足かせとなっているのです。

このままでは国内の現場で活躍する人材が成長しないので、技能やノウハウも継承されず、やがて製造業の優秀な人材が枯渇することにもなりかねません。

IoT導入により作業のタイムロスの減少と技能継承

これらの課題に対して真摯に向き合った企業も多くあります。川口市にある企業の取り組みを例に、課題解決の方法を見ていきましょう。

川口市といえば江戸時代からものづくり産業が繁栄したエリアとして有名です。明治時代からは鋳物・機械・部品・金属・精密加工等の産業が集積し、日本の近代化を支え、昭和の時代には戦後復興の大きな貢献をしました。

それだけに属人化が今後の成長の足かせとして顕在化するのも早かったのです。ここで例にする企業は国内でも業界のトップランナーとして名を馳せている、マンホール蓋専業メーカーです。マンホール蓋は仕様がまちまちであり、どうしてもは多品種少量生産になります。それだけにベテラン作業者の経験や勘に頼る部分が大きいと言えます。

この企業にはたまたまIoT導入に詳しい人材がおり、社内で綿密な調査と自社に合ったシステムの開発が行われました。彼らは各設備のデータを取得・蓄積し、生産管理と紐づけて情報を一元管理することに成功し、稼働状況を「見える化」したわけです。

同時に、かつてはシステムへの入出力を人手に依存していたものを自動化しました。これらのIoT導入によって同社では、注文と製造の工程がダイナミックに連動し、タイムロスや作業の負担軽減に効果を上げています。そのようなデータの蓄積が、今までベテランにしか操れなかった作業の暗黙知や経験知を誰にでも理解できる情報として明示できるようになったのです。

まとめ

例に挙げた事例では、IoT導入により電気炉の高温環境での温度計測や作業などの危険な労務管理を改善することにも成功しました。労務管理にも効果があった点は会社としては嬉しい効果だったと言えるでしょう。

今回の事例ではIoTに知見のある人材がいたことが幸いしました。しかし、それを実施することを決断した経営陣の判断も早かったのが成功の理由です。経営者の理解なくしてIoT導入は成功しません。その点で、暗黙知を介した技能継承とは違う形の継承と、人材育成がIoTによって効果を出し始めている点を多くの工場関係者や経営者は理解し、改善していくことが重要だと考えられます。

CONTACT

製品・サービスに関するご質問、お見積もり、お問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。

 050-5505-5509

受付時間 9:30 - 12:00, 13:00 - 17:00
(土日祝および年末年始を除く)