世界の製造現場でIoTが爆発的に広まっていることは、IoTデバイスの製造数が直近の10年間で実に5倍に増えていることでも分かります(HIS社調査)。一方でIoT活用に関して失敗した事例もよく耳にすることも増えています。その重要性を理解していても、導入についてのノウハウがない企業、特に中小企業は多く、IoT活用のメリットを生かしきれない事例があります。
IoT導入に失敗する理由とは何でしょうか。失敗事例からIoT導入のポイントを学んでみましょう。
製造業がIoT導入において失敗する理由
実は、日本国内の企業は必ずしもIoTに対して理解度が深いわけではなさそうです。「The Internet of Things : Today and Tomorrow」という報告書では、日本企業のIoT理解度は20ヶ国中最下位という調査が報告されています。理解不足はIoT導入の方向性を失わせてしまいます。
失敗事例でも真っ先に挙げられるのはIoT導入の目的が不明瞭なケースです。これもIoT導入の理解度が低いための現象といえるかもしれません。「課題をクリアにする方策とは」「IoTを必要とする機能とは」「IoTを導入することで得られる効果は」など、具体的に明示できる目的を設定しないままの導入は失敗する確率が高いといえます。
また、経営層と現場とのコミュニケーション不足も失敗の事例として多いようです。現場を無視した形でのIoT導入は決して成功しません。実際の作業やメンテナンスを行う現場の作業者が使いこなせない、または導入の目的を理解していないケースでも上手くいかないのです。
コスト面での制限がIoT活用の効果を減少させている場合もあります。IoT提供業者によっては高額なシステムを提示されることもあるのです。もちろん価格が高いということは、それに相応しい高機能性が担保されているのでしょう。しかし自社の課題や目的に合ったものでなければ、コストに見合った効果は出せません。逆にコスト削減から必要な機能を省いてしまった事例でもコストパフォーマンスとしてはよいものにならないでしょう。
IoT導入を成功させるための対策
上記の失敗例をベースに考察すると、その対策は以下のようになります。
1. 課題またはIoT導入目的の明確化
2. 経営者の導入に対する姿勢
3. 現場への説明と理解
IoT導入方法について平成30年に経済産業省から出されている報告書によると、トップダウンの必要性が指摘されています。IoT導入には経営者の強いリーダーシップと理解が必要だということです。
もちろん現場を無視したトップダウンでは軋轢を生むだけで、上手く進展することは期待できません。現場の理解を深めるためにもコミュニケーションを重視し、IoT導入の目的と方法論を情報として共有することが大切です。
また、IoT活用を成功させる重要なポイントは、導入後の取り組み方にあります。導入後の業務フローや人員配置など、IoTの効果を発揮できる体制を整えていくことです。これは一度の改善では意味がありません。IoTの特徴は課題や状況、または予知をリアルタイムでビジュアル化される点です。故にPDCA「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」を実施しやすい点が大きなメリットです。
まとめ
IoT活用の最大の効果は、実は失敗に「学びやすい」ところだとも言えます。IoTによる「見える化」によって、誰でも問題点や課題または効果やメリットを容易に分かるようになります。失敗があってもその状況や改善方法を全員で共有できるため、改善のための方策や見直しが迅速に実施できます。
IoT化がまだ進んでいない企業はぜひ検討してはいかがでしょうか。専門業者へ相談しても良いですし、自ら学習しても良いです。まずは一歩踏み出してみることが大切です。